自作ニンニク小型乾燥室の改良-除湿機と有圧換気扇の活用-
自作ニンニク乾燥機を、これまで何パターンか作ってきました。
第一号は、去年作った有圧換気扇による送風乾燥機
→小型ニンニク乾燥機を簡単・低コストで自作する-1
第二号は、除湿機を使って小さい密閉ボックス内での乾燥室
→除湿機を使った小型ニンニク乾燥機を自作する
第三号は、ヒーターとファンを併用した温風乾燥機
→ニンニク用小型乾燥室を自作する-ファンとヒーターで自作温風乾燥機-
どれも改善点が残り、確実な乾燥には力不足でしたので、これまでの経験を元に改めてニンニク乾燥機を自作してみました。
※長文なので、最後のまとめだけ読んでも可です。→まとめ
新作ニンニク乾燥機の構想
乾燥機に求める条件は、「一定温度」「低湿度」「送風」の三つ。
その条件を満たす乾燥機の構想を練ります。
- 低湿度・高温の密閉した乾燥室とする
- 乾燥室は全面を断熱材で囲う
- 湿度は除湿機で下げる
- 温度はヒーターで上げ、温度スイッチで一定温度にコントロールする
- 有圧換気扇で送風も行い、乾燥室内の空気循環とニンニクへ常に風が当たるようにする
これまでの乾燥機を全て組み合わせたような感じですね。
もちろん、高額な専用機を購入すれば解決しますが、コストも考慮して・考えて自作して、その過程も楽しみます(^^)
外壁をスタイロフォームで作る
まず乾燥室の外壁を作ります。
温度の安定化の為には、断熱性能の高い物で囲う方が良いでしょう。
最初は木枠などを作り、外側に断熱材を貼ろうかと思いましたが、コストと製作時間カットの為、断熱材そのものを外壁とします。
断熱の為といえば、一般的には白い発泡スチロールですが、今回はスタイロフォームを使用します。
スタイロフォームとは、建築用の断熱材として使われる商品(名)です。
高断熱な青い発泡スチロールと思えばいいでしょう。
白い発泡スチロールと同じ厚さで比較すると
- 断熱性能は約2倍
- 重さは約1.5倍
- 価格は約1.3~1.4倍
つまり、ちょっと高くなるけど、断熱性能は2倍。
同じ断熱性能を得る為なら、発泡スチロールより安く済む。つまり使わない手はありません(^^)
それと、加工したり長期で使っても、ボロボロしないのもDIY向きですね。
今回私が購入したのは、20mm厚さ。扱いやすさと価格と性能のバランス的に、これぐらいかなと。
・・なのですが、もっと薄くても良かったかも。詳しくは後述。
乾燥室の外枠は19mパイプで作る
ただ、スタイロフォームだけで箱を作るのは大変なので、自作パイプ小屋作りで余った19mmパイプを使って、外枠を作ります。
作業小屋自体がパイプで出来ているので、そのパイプを使えば資材節約・強度アップになります(^^)
まぁ、枠は何で作ってもいいと思います。木材でもメタルラックとか樹脂パイプとかでも。
高さは、ニンニクを入れた収穫カゴの段数+有圧換気扇を納めた最上段+最下段の吸気用の空カゴ+カゴ1段分程度の余裕の足し算で決めました。
横幅は、収穫カゴの横幅+左右の余裕を適当に・・です。
スタイロフォームを6面に貼る
作ったパイプ枠に合わせて、スタイロフォームをカットします。(カッターで簡単に切れます)
まずは下面と横3面まで。
私の作業小屋は、床が地面のままですので、下からの湿気を防ぐためには下面も必須です。
ただ、重たい収穫カゴとかを載せるのであれば、下面はベニヤやコンパネみたいな木材パネルの方がいいかもしれませんね。
もしくは、スタイロフォームの上に貼るとかね。
なお下面に貼ってある透明の板は、中空ポリカ。
余っていたやつを貼って、収穫カゴが滑りやすいようにしています。
下面がコンパネとかなら、収穫カゴの下にコロをつけたほうが出し入れしやすいかも。
残り2面分についても、カットしておきます。
面倒だったので、上面は残った分を載せただけ。カットしてません(笑)
ある程度しっかり寸法取れば、ピタッと各面が合うので、スタイロフォーム同士は養生テープで簡単に止めてあるだけです。
隙間がちょっとあっても、まぁ大きな影響は無いでしょう。
乾燥室に何の機材を入れるか
外壁が完成したら、中に収穫カゴと機材を入れていきます。
機材については、ニンニクをどのように乾燥するのかで決めました。
産地の大規模栽培農家では、温風の乾燥が一般的です。
外気をヒーターで一定温度に暖め、送風機でニンニクに当てて、外に排気する。
送る温風の湿度はあまり重要視していません。
なぜなら、広大な空間や大量のニンニクの水分を除湿するのは現実的でないから。
でも、私は小規模栽培。
大型のヒーターを用意するより、除湿機で低湿度にした方が良いと判断しました。
という事で、第一案の構成がコレ。
除湿機・温度スイッチ・セラミックファンヒーター・有圧換気扇の組み合わせ。
除湿機:
古い機種をヤフオクで購入。
除湿機には「コンプレッサー式」「デシカント式」「ペルチェ式」、そして最初ふたつを組み合わせた「ハイブリッド式」とあるが、コンプレッサー式を選択。
理由は、除湿能力が高く、かつデシカント式だと温度が上がりすぎるから。
安くてコンパクトな除湿機は、デシカント式かペルチェ式の可能性大なので注意を。
温度スイッチ(ヒーター用):
設定温度になるとスイッチが自動でオフ。
温度が下がると、今度は自動でオン。
ニンニク乾燥で必要な35度に設定。
詳しくは→前回記事参照
セラミックファンヒーター:
ダイヤル式のスイッチで、一度ONにすれば入りっぱなし。
温度スイッチでコンセントへの給電が入り切りした時、ヒーターも一緒に入り切りする為に必須。
前回はカーボンヒーターを使ったが、温度均一化にはファンヒーターの方が良いとのアドバイスがあり、変更。
カーボンヒーターもやり方次第で使えるとは思う。
有圧換気扇:
最初に作った、送風のみの乾燥機で使った換気扇。
ニンニクが詰まった収穫カゴやコンテナに風を当てるには、"有圧"換気扇が良い。
詳しくはこの記事一番上の、第一号乾燥機のリンク参照。
乾燥機第一案の結果
この組み合わせで、まずは日中の半日ほど運転してみました。
結果は、「最高温度46度・最低温度38度」「最高湿度33%・最低湿度20%」
(温湿度計で記録・温度スイッチが一度入ったところで数値リセット)
・・おや?設定温度の35度を下回る事なく運転していたようです(大汗)
原因は、除湿機と高断熱。
除湿機って、構造上温風が出るんですよ。
それでも、そこまで暑くなるのは想定外でした。
スタイロフォームでガッチリ高断熱にしたので、こもった熱が逃げないのも要因でしょう。
スタイロフォームを使うなら、20mmより薄くした方がいいかもしれません。
なお先述しましたが、除湿機も方式によってはもっと熱くなります。
コンプレッサー式でこれなら、正直ヒーターは全く不要でしたね。
でも、湿度の低下はバッチリでした。
改良した第二案での結果
第一案でのテスト結果、46度はさすがに高温すぎです。
乾燥室の広さなども影響するでしょうが、機材を変えての改良、再チャレンジです。
除湿機(コンプレッサー式)・除湿機(ペルチェ式)・温度スイッチ・有圧換気扇の組み合わせ。
除湿機(ペルチェ式):
パソコンのCPU冷却などにも使われる、ペルチェ素子を用いた除湿機。
非常にコンパクトで安価だが、除湿能力は低い。
下駄箱や押入れなど、狭い空間用として活躍する。
除湿機2台は、それぞれ別の使い方をします。
コンプレッサー式は、温度スイッチに繋げて、最初の加温と除湿を担当。35度になったら自動で切れます。
残念な事に、温度スイッチで一度切れた後、再度自動でONになるようなダイヤル式のスイッチを持つコンプレッサー式除湿機は見つけられませんでした。
(切れたらもう自動では復帰しません)
そこで、ペルチェ式は直接コンセントにつなぎ、止まる事なく除湿を続けます。
この方式の場合、高断熱のおかげで温度は保たれます。
(ペルチェ式もある程度熱を出す)
そこそこ密閉もしているので、湿度は低いまま推移。
ただし、夜間にこれをやると外気温の影響で温度低下が大きくなります。
そこで日中に加温での乾燥を行い、夜間は送風のみとします。
このような乾燥と休止を繰り返す方法を、テンパリング方式と呼びます。
産地で普通に行われており、長期貯蔵に向く乾燥方法だそうです。
この第二案での結果は、半日で41度・36%
湿度は合格・温度はまだ少し高いですね。(この日は暑かったのもあるでしょう)
次の日では34度・44%でしたから、気温の影響も大きく、安定化は難しい感じです。
第三案・外気の導入
もうひとつ試して見た方法が、若干の外気を取り入れる方式です。
蓋を少しずらし、有圧換気扇で送り出した風がすこーし出ていく感じです。
機器は、第二案と一緒。
ただし、温度スイッチと組み合わせるのは、ペルチェ式除湿機。
このペルチェ式除湿機は、スイッチのON-OFFが固定出来るので、温度スイッチで一度電源が切れても、温度が下がれば自動で復帰出来ます。
こいつで細かい温度調整は行い、メインのコンプレッサー式除湿機はフル稼働させて湿度を下げます。
多少温度が低い時もありますが、35度を大きく超える事はなく安定していますね。
わざわざ除湿機を2台購入するのが無駄なら、コンプレッサー式1台と、ヒーターと温度スイッチの組み合わせをして、外気導入の大きさを調整しながら温度がなるべく35度近辺で落ち着くようにすれば良いでしょう。
まとめ
かなり長文になったので、現時点(2020年6月)での自作ニンニク乾燥機のまとめ。
<基本構成>
・断熱材で囲った乾燥室
・その中に有圧換気扇での送風乾燥機を入れる
・何かで加温して、除湿機も併用する
・乾燥と休止を繰り返す、テンパリング乾燥を採用する
<1.密閉して低湿度での乾燥>
・断熱がしっかりしていれば、除湿機だけで加温と低湿度が可能
・温度は極力35度以下とする
・安定して気温の低い夜間に加温した方がコントロールしやすい
・気温の高い日中は送風だけとする
<2.外気を導入しながら乾燥>
・多少の外気取り入れをして、温度が高くなりすぎないようにする
・温度のコントロールは、温度スイッチを組み合わせたヒーターかON-OFF可能な小型除湿機を追加する
・こちらもテンパリング乾燥とする
<3.最もシンプルでコントロールしない乾燥機>
・外気を多めに取り入れる(目安は最大35度)
・コンプレッサー式除湿機を入れて、加温と除湿をする
・夜は送風だけにする
こんな感じでしょう。
密閉させたまま温度コントロールをするなら、中の空気をアルミダクトとダクトファンで抜き、アルミダクトを通る間に空気を冷却。そのまま乾燥室に戻せば良いでしょう。
(ダクトファンは、35度を越えたらONするファン用温度スイッチと組み合わせておく)
これは、来年の課題でもいいかな。
もう少し今年のニンニク乾燥も続きますので、また使用レポートもしていきます。